深刻化する少子化
現在、「少子化」は日本が抱える深刻な問題の1つです。少子化自体は昔から言われていましたが、近年はさらにその影響が大きくなっており、さらなる対策が求められています。実際、1970年代から少子化現象は続いており、現在の総人口に占める14歳以下のいわゆる年少人口は約1割強、逆に65歳以上の高齢者人口は3割近くになっています。1950年ごろには年少人口は総人口の3割強でしたので、少子化の影響で人口バランスが大きく変化したことがわかります。
また、今後の予測としても少子化問題はさらに深刻化することが予測されています。近年でも2010年に日本の総人口はピークを迎え、そこから減少を始めています。さらに、高齢者人口の割合は増え続け、2050年ごろにピークを迎えるとも言われています。出生率が上がらない限りは、15歳~65歳の生産年齢人口も減り続け、年少人口も増えないままとなり、さらなる少子化が進むと言われています。
子どもは減っているのに私立中学生は増えている?
このように少子化は深刻化しており、実際、公立中学校の生徒数は大きく減少傾向にあります。
このグラフが示すとおり、1985年と2017年を比較すると、約266万人減少しています(学校基本調査調べ)。小学生の児童数でみてみても、約40万人の減少となっています。
このように少子化が深刻な中、私立中学生の生徒数としては増加傾向にあります。
グラフを見てもわかるように、1985年と2017年を比較すると、私立中学生は約6万4千人増えています。その他、公立中高一貫校の人気も非常に高くなっています。
なぜ、中学受験が人気なのか?
少子化が深刻化する一方で、私立中学や公立中高一貫校の人気は高まっています。これにもさまざまな背景があると推測されます。
教育資金が高くなっている
少子化の中で世帯当たりの子どもの数が減ることで、子ども一人当たりにかける教育費が高くなっている状況があります。出生率をみても、第1次ベビーブーム期になる1949年では4.32、第2次ベビーブーム期になる1973年で2.14、そして2017年では、1.43と確実に減少しています。これと合わせて、働き方の変革・価値観の変化などで共働き世帯が増えたことも影響していると思われます。
大学入試制度などの教育改革
よりグローバルで自発的な人材の育成を目指し、様々な教育改革が進められています。英語に始まる語学学習やプログラミング教育などによる思考力、さらには自己表現能力や論理的思考などなど、今後の教育には幅広い範囲でこれまでとは違う内容が求められています。まだまだ課題はあるものの、大学入試制度の改革も進められています。こういった環境変化の中でやはり独自の教育理論や方針を持つ私立中学への人気が高まっているのかもしれません。
こういった環境や生活様式の変化などが影響している背景が予測されます。そして、この様相は今後も続くと予測されます。というより、これからがまさに本番という状況です。そうなると、今後も中学受験はますます増えていくでしょう。
中学受験のメリット・デメリットはこれ!
中学受験は、各入試の中でもかなりレベルの高い入試になり、合格倍率の高さや求められ璃知識や能力の高さなどもよく知られているところです。もちろん、受験に向けて取り組む過程で得られる勉強の知識など、得られるものは様々ですが、大きく「中学受験」を見たときにメリットやデメリットになる経験も様々存在します。
中学受験のメリット
様々なメリットがある中学受験ですが、代表的なものをご紹介します。
■特色のあるカリキュラム
これは合格し、進学した後のメリットですが、私立中学の多くは中高一貫校です。高校まで含めての6年間でのカリキュラム構成となりますので、学校ごとの特色を盛り込みやすくなります。また、間の高校受験というハードルがなくなりますので、部活動などの勉強以外の活動についても途中で切れることなく、取り組み続けることが出来ます。こういった特色のあるカリキュラムに魅力を感じて受験される方も多くいます。単なる偏差値だけでなく、どういったところに力を入れているのか、それが自分のお子さまに合うのか合わないのかも学校選びの1つの基準になります。
■学校の手厚いフォロー
公立中学と違い、私立中学では実績などに基づく生徒募集が必要です。そうなると少しでも良い結果を追い求めるのは必然です。それゆえ、学習面だけでなく、生活面でもしっかりとしたフォローが期待できます。「厳しい」という言い方もできますが、それだけ私立の先生方は強い危機感をもって生徒対応を心がけていると言えます。
中学受験のデメリット
次にデメリットになる部分もいくつかご紹介します。
■過酷な受験勉強
多くの子どもにとって、最初の受験は高校受験になります。それを3年早い段階で経験するというところに難しさがあります。年齢的にまだまだ子どもではありますが、自分に甘くしてしまうようでは受験は取り組めません。モチベーション高く取り組める環境づくりや声掛けが必須ですので、ご家族の協力は欠かせないでしょう。さらに周囲の同級生とはスケジュールが大きく異なります。放課後、友だちが遊んでいる時間帯に塾や家庭教師で勉強ということはざらにあります。周囲に同じように受験を考えている友だちがいなければ、学校でも疎外感を感じてしまうかもしれません。そういったところも含めての環境づくりやフォローが必要不可欠となります。
■経済的負担
受験勉強中も教材費だけでなく、塾や家庭教師なども必要な可能性があります。こういった部分は年間でみると大きな費用となります。多くの中学受験生は小学校4年、早くて3年生、どんなにおそくても5年生からスタートしているケースがほとんどです。数年間にわたっての費用負担となりますので、あらかじめ計画しておくことが必要でしょう。また、合格進学後も公立中学と比較するとやはり経済的負担は大きくなります。授業料だけでなく、制服代や教材費、各寄付金などこちらもあらかじめ見越しておく必要があります。
■失敗するリスク
先にも紹介した通り、中学受験はかなりハードルが高い受験です。もちろん失敗し、不合格となる可能性も大いにあります。どんなに受験勉強期間中に費用をかけても、そのリスクはゼロにはなりません。そして、何より、不合格になってしまった場合のお子さまの精神面でのフォローは必要不可欠です。保護者としてはそのリスクも理解して、いざというときにしっかりとフォローできるように心構えをあらかじめしておく必要があります。
習い事としての中学受験勉強で得られるメリット
中学受験には先に紹介したようなメリット・デメリットがあります。もちろん合格して得られるものが多くありますが、そこに至る過程の中で得られるものも多数あります。最後に、その過程の中で、能力育成という観点でどういった能力が伸ばせるのか、必要とされるのかをご紹介します。
問題解決力
トラブルや課題に対してあらゆる角度から分析し、解決まで冷静に取り組める力のことです。地頭のバランスが見えます。中学受験の問題は就職試験でも通用するほど思考力を要します。中学や高校のようにまだまだ公式を習っていない中で、難解な文章題に挑戦するからです。その積み重ねが、最もつきにくい能力であるこの力を高めることができます。
理解力
問題文をしっかりと理解し、読み取る力です。出題の意図は何なのか、その細部まで読み取ることで全体像が見渡せるようになります。中学受験で問われることは、細かい文章の矛盾点や背景の読み取りがあります。つまり、作問者の意図を探りながら、必然的に「行間を読む」力を備えていきます。これからの高校で科目化される「論理国語」に通じる力です。
ストレス耐性
問題に対して、イライラせず、冷静に取り組める力のことです。時間へのプレッシャーや難問への対応力がわかります。受験のためにいろいろなことを犠牲にして努力を続けなければいけません。その継続する力や逃げない心を育むことができ、将来の社会人力につながっていきます。
いかがでしょうか?中学受験は、得点力以外のことも意識すれば、このような力を備えていくことができます。小学生の放課後の過ごし方も限られた時間の中で何をするのかの選択になります。単なる習い事というより、もっと先を見据えて、どういった部分を伸ばしてあげたいのかを考えての選択もいいかと思います。
ぜひ、ご参考してください。